防災ヘリポート
災害関連死ゼロの未来へ:見過ごされてきたヘリコプターの弱点【3】

ヘリコプターが災害時に大きく活躍できない大きな理由の一つに、安全に離着陸できる場所が少ないという現状があります。では、ヘリコプターにとって安全な離着陸場所とは、具体的にどのような場所を指すのでしょうか?
そもそもヘリコプターは、空中で停止するホバリングや、垂直離着陸の能力も持っています。しかし、実はこれらは機体にもパイロットにも極めて大きな負荷がかかる飛行方法なのです。特に危険なのが、垂直降下中に機体が急降下してしまう「セットリング」という現象。こうしたリスクがあるため、ヘリコプターは通常、飛行機のように緩やかな斜めからの角度で離着陸を行います。
この特性から、ヘリコプターが安全に運用されるためには、広く平坦で、周囲に障害物のない場所が必須となります。例えば、地上のヘリポートを整備しようとしても、近くに民家や電柱、木々などがあれば、安全な離着陸の妨げになってしまいます。

さらに厄介なことに、地上のヘリポート自体が災害に弱いという問題を抱えています。全国的に避難場所として指定されやすい河川敷などは、洪水が起きれば水没しますし、地震による液状化現象で使用不能になることもあります。たとえ大雨が降っただけでも、地面はぬかるみ、たとえ着陸できたとしても物資の積み下ろしや救助者の搬出入に支障が出るなど、その機能は大きく制限されてしまうのです。
つまり、ヘリコプターは「どこにでも降りられる」万能な乗り物ではないからこそ、行政は災害時にも確実に機能するヘリポートの確保に、もっと真剣に目を向ける必要があるのです。