病院ヘリポート
ドクターヘリを支える舞台裏:理想のヘリポートとは?
ヘリコプターは、一旦飛び立てば、渋滞や信号のない空を時速200Km以上で移動することが出来るという利点を持っています。しかし実際は、出動命令を受け、格納庫から機体を搬出し飛び立つまでには大変な時間と労力を要するため、緊急時の対応がどうしても遅くなります。
ヘリコプターの機動力を最大限に活かし、一刻を争う救急現場で真価を発揮するためには、それを支えるヘリポートの機能性を高めることが重要です。
では緊急医療の場面で、素早く安全に離着陸ができる理想のヘリポートとは具体的にどのようなものでしょうか?今回は、獨協医科大学病院の事例から、理想的なヘリポートが持つべき8項目を紹介します。
目的と視認性を考慮したヘリポート
地上ヘリポートは建設コストやメンテナンス性、操縦の容易性で優れ、屋上ヘリポートは都市部での利便性が高く傷病者への負担が軽いなど、それぞれに利点があります。立地や利用目的に合わせヘリポートを建設する必要があります。
上空からだけでなく、地上からもはっきりと認識できるデザインが重要です。 ICAO(国際民間航空機関)の基準を満たすことはもちろん、周辺環境との調和・入院患者からの視点も考慮したデザインが理想的です。
滑りにくい特殊塗装
雨天時でも滑りにくい「ヘリポート専用」の特殊ノンスリップ塗料をヘリポート面や通路に採用することで、医療スタッフの転倒事故を防ぎ、安全な作業環境を確保します。
快適なストレッチャー通路
ウレタン舗装を施すことで、ストレッチャーのガタつきを抑え、患者搬送時の快適 性を向上させます。 また、通路を色分けすることで、患者搬送の動線を明確化します。その際、患者にとって負担の少ない動線であるかを考慮することが大切です。
厳格な監視システム
過去数か月分の映像を保存できるだけでなく、見たい場所をクリックするだけでその地点の映像がアップされる監視システムを導入することで、安全管理を強化します。
効率的なスライディングヘリパッド
パイロットが一人いればボタン一つで格納庫からパーキングスポットへ機体を移動できるスライディングヘリパッドは、急な天候の変化にも対応でき、迅速な出動を可能にします。
コンパクトで機能的な格納庫
格納庫回りにトラスを設置することで、照明やサインボード、無線の受信機の設置など多用途に使用できます。
必要最小限の設備でありながら、機能的でシャープなデザインの格納庫は、医療チームのモチベーションを高めます。
大きなシャッターに施されたドクターヘリチームのデザインは、チームの士気を高めるだけでなく、ヘリポートのシンボルとしての役割も果たします。
用途に合わせた専用の照明
「ヘリポート専用夜間照明」は、夜間や悪天候時にヘリコプターを安全に導く重要な設備です。大型空港用の照明を転用するとヘリコプターの操縦士にとって「まぶしすぎる」問題があり、専用照明によってこれを防ぎます。
格納庫照明にLEDを採用することで、スイッチONですぐに点灯でき、電球交換の手間も省けます。
地下タンクで効率的な給油設備
地下に10キロリットルタンクを埋設し、効率的な給油を可能にすることで、パイロットや整備士の負担を軽減し、燃料費削減にも貢献します。航空燃料の取扱いは特殊で、特にヘリポー ト給油は施主(病院) 、運航者、そして設計会社との綿密な打ち合わせがあって初めて安心・安全な給油施設が 出来上がります。
まとめ
理想のヘリポートとは、安全性を確保しながら、迅速な救急医療を実現するための機能性を備え、利用者にとって快適な作業空間を提供するだけでなく、周辺環境との調和も考慮した美しいデザインであるべきではないでしょうか。
そして今後は、技術の進歩とともにヘリポートの在り方も進化していくでしょう。ドローンとの連携など、未来を見据えたヘリポートの創造が、私たちの安全と安心を支え、より良い社会の実現に貢献していくはずです。