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ドクターヘリ拠点病院の施設設計:求められる機能と安全性の要点

ドクターヘリ拠点病院の施設設計:求められる機能と安全性の要点

ドクターヘリの拠点病院では、1施設あたり年間300回から700回程度という高頻度の離着陸が想定されます。ドクターヘリ拠点病院は、要請時に直ちにヘリを出動させられる態勢が求められるため、その施設設計には高いレベルの機能性と安全性が不可欠です。

このコラムでは、その不可欠な機能性と安全性を実現するために、施設設計でどのような点が重要視されているのか、主要なポイントをご紹介します。

「動線」の最適化で患者負担軽減

拠点病院の設計において、最も重要なのは医療スタッフと患者さんの動線です。重篤な傷病者の負担を最小限に抑え、治療開始までの時間を短縮するため、ヘリポートからERへの移動方法が鍵となります。

理想とされるのは、屋上へのヘリポート設置と、エレベーターを使った垂直移動です。

◾️垂直移動(屋上設置)の利点:重篤な傷病者の体に負担をかける水平移動(長い廊下を移動すること)を避けることができ、エレベーターを使い、最短距離で救命救急室へ搬送可能です。

垂直移動は患者もスタッフも負担が軽い
水平移動は負担が大きい

24時間体制を支える給油・照明設備

ドクターヘリが24時間、安定してミッションを遂行するためには、継続的な運用を支えるインフラが必須です。

◾️専用給油設備:ドクターヘリは、重量を抑えるために燃料を満載せずに出動することが多いです。そのため、任務から帰還後、直ちに次の出動に備えて給油できる専用の給油施設が必要となります。この給油設備は、厳格な安全基準である「ジェット燃料取扱基準に関する指針」に準拠しなければなりません。

◾️高機能な夜間照明設備:夜間や薄暮時、そして大災害時でも24時間体制を維持するためには、高度な夜間照明設備が不可欠です。特に安全な着陸のためには、航空法規に基づいたヘリポート専用の照明が推奨されます。

繰り返しの衝撃荷重と磁界への対策

ヘリポートの床面には、繰り返しかかる衝撃荷重に強く、磁界の乱れを防止できるアルミ素材を用いることが理想的です。これは、鉄筋コンクリート(RC)構造にありがちなクラック(ひび割れ)の発生リスクを低減し、航空計器への影響を避け、確実な運航と安全性を担保するために重要な要素です。

また、大規模災害時には、自衛隊などの大型ヘリ(7t~11tクラス)の着陸も考慮しなければなりません。そのため、床面強度は高く設定することが求められます。

コンクリートとアルミデッキの特性比較

まとめ

ヘリポートの機能性・耐久性への追及は、そのまま傷病者の「救命率」に直結します。高度な要求に応えるヘリポートの存在こそが、ドクターヘリの信頼性を担保する上で不可欠な要素なのです。

さらに近い将来、ドローンeVTOL(空飛ぶクルマ)への対応も必須の検討事項となるでしょう。これからドクターヘリの拠点病院となることを目指す施設においては、ヘリポートの設計段階から、給電設備や電池火災対策なども含め、モビリティの未来を見据えた準備が不可欠な要件となるはずです。