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病院ヘリポート設置ガイド:非公共用 / 場外離着陸場 / 緊急離着陸場の違いと選び方

病院ヘリポート設置ガイド:非公共用 / 場外離着陸場 / 緊急離着陸場の違いと選び方

病院へのヘリポート設置は、救急医療における迅速な患者搬送を可能にし、広範囲からのアクセスを確保する上で不可欠な基盤整備です。しかし、一般的に言われる「ヘリポート」にはいくつかの種類があり、その設置目的や運用方法、関連法規が異なります。本稿では、病院ヘリポートとして検討されることの多い「非公共用ヘリポート」「飛行場外離着陸場」「緊急離着陸場」の3種類に焦点を当て、それぞれの設置用途と特徴について解説します。

1. 非公共用ヘリポート

非公共用ヘリポートは、特定の者または特定の目的のために設置・運用されるヘリポートです。病院が自らの医療活動のために設置する場合、原則としてこの形態に該当します。一般的に、年間300回以上の利用が見込まれる場合に適しています。

設置用途:

◼️患者の搬送、知事や病院長の移動、医師の派遣、医療物資の輸送などの多目的利用のため

特徴:

◼️設置基準:航空法や関連法規に基づき、滑走路(離着陸帯)、誘導路、エプロン、標識、照明設備、風向風速計などの施設基準を満たす必要があります。これらの基準は、航空機の安全な離着陸を確保するために詳細に定められています。

◼️運用体制:運航管理体制、気象情報の収集・提供体制、緊急時の対応計画などを整備し、国土交通大臣の許可を得る必要があります。

◼️費用:設置には相応の費用がかかります。土地の造成、施設の建設、設備の導入に加え、維持管理にも継続的なコストが必要です。

2. 飛行場外離着陸場

飛行場外離着陸場は、航空法に規定される飛行場以外の場所で、ヘリコプターの離着陸のために使用される場所を指します。非公共用ヘリポートと比較して、より簡便な手続きで設置できる場合があります。年間50回程度の比較的少ない利用頻度を想定している場合に適しています。

設置用途:

◼️ドクターヘリのサテライト病院になるため

◼️防災航空隊・県警航空隊・海上保安庁の受け入れ

◼️臓器移植ヘリの受け入れ

◼️災害拠点病院であるため

※ドクターヘリのサテライト病院…緊急患者がドクターヘリで運び込まれるのを受け入れる体制が整った病院

特徴:

◼️設置基準:非公共用ヘリポートに比べて、施設基準が緩和されています。例えば、恒久的な誘導路やエプロン、照明設備の設置が義務付けられない場合があります。

◼️運用体制:運航管理体制は、非公共用ヘリポートと同様に安全確保が求められますが、許可手続きが簡略化されている場合があります。

◼️費用:設置費用は、非公共用ヘリポートよりも低く抑えられる可能性があります。

◼️制約:運用できる機種や時間帯、離着陸の頻度などに制約が設けられることがあります。また、恒常的な救急搬送拠点としての利用には適さない場合があります。

3. 緊急離着陸場

緊急離着陸場は、緊急にヘリコプターが離着陸する必要がある場合に一時的に使用される場所です。平時はヘリポートとしての機能を持たない場所が、緊急時に臨時の離着陸地点として活用されます。火災などの特別な緊急事態が発生しない限り、通常は利用されることはありません。

設置用途:

◼️万一の火災などの際、支援活動や患者搬送を行うため。

特徴:

◼️設置基準:平時は通常の場所であるため、特別な施設基準は存在しません。ただし、離着陸の際には、周囲の安全が確保され、障害物がないことなどが求められます

◼️運用体制:事前の許可や承認は原則として不要ですが、離着陸時には航空交通管制機関への連絡や、安全確保のための措置が必要です。

◼️費用:恒久的な設備投資は不要です。

◼️制約:あくまで緊急時の一時的な利用が前提であり、日常的な救急搬送拠点としての利用は想定されていません。夜間や悪天候下での運用には制約が多いです。

まとめ

病院にヘリポートを設置する場合、上記の3つの選択肢の中から、設置目的、運用頻度、予算、地域の特性などを総合的に考慮して最適な形態を選択する必要があります。

◼️恒常的な救急搬送拠点としての利用を主目的とする場合:非公共用ヘリポート

◼️限定的な目的での利用や、初期費用を抑えたい場合:飛行場外離着陸場

◼️災害対策の一環として、緊急時の利用を想定する場合:緊急離着陸場

いずれの形態を選択するにしても、航空法をはじめとする関連法規を遵守し、安全性を最優先とした計画と運用体制の構築が不可欠です。専門的な知識や経験が求められる領域ですので、計画の初期段階から航空法規やヘリポート設置に精通したプロのコンサルタントに相談されることを推奨いたします。