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昔は本当に「車」だった!? 「空飛ぶクルマ」開発の歴史

昔は本当に「車」だった!? 「空飛ぶクルマ」開発の歴史

昨今、次世代のモビリティとしてニュースを賑わせている〝空飛ぶクルマ〟ですが、その構想はいつ頃生まれたのでしょうか。実はその歴史を紐解くと、航空機の黎明期にまで遡ることができるんです。

飛行機の歴史は、1903年に米国のライト兄弟が動力飛行機の飛行に成功したことから始まりました。その後、ヨーロッパでの開発が進展。現在と同様の操縦かんによる操縦方法が確立され、1920年代には郵便輸送や旅客用として実用化されています。

一方、ヘリコプターは、1907年にフランスで人を乗せた状態での浮上に成功してから実用化までには長い時間を要し、世界初の実用的なヘリコプターの試験飛行は1937年まで待たなければなりませんでした。その後、ヘリコプターが実用化されたのは1942年のシコルスキの機体(画像1)からと言われています。

画像1_シコルスキ R-4(世界初の実用量産ヘリコプター)

実は、飛行機やヘリコプターが実用化されて間もない頃、自動車に翼をつけたような文字通りの〝空飛ぶクルマ〟が開発されています(画像2)。第二次世界大戦後には、垂直離着陸の機能を備えた機体も開発され始め、1955年にはベル社が軍事利用を目的として、ティルトローター式による垂直離着陸可能な機体の試験飛行を成功させています。この機体はオスプレイのベースとなっています。

画像2_コンベア社が開発した試作型の空飛ぶ車「コンベア モデル118」
画像3_ベル XV-3(ティルトローター機の先駆け)

米国では、この技術に着目して民間利用を検討。主要都市間の移動が可能になるとの考えから米国連邦航空局は1991年、垂直離着陸機用の着陸施設であるバーティポート設計についての通達を発行しました。しかし、2010年には通達がキャンセルされています。

その後、垂直離着陸機(〝空飛ぶクルマ〟)が注目されるきっかけとなったのが、2009年にNASAの技術者が発表した一人乗り用のeVTOL(電動垂直離着陸機)のコンセプト、Puffinの公開だったといわれています。同じ頃には、VolocopterやJoby Aviationなど本格的に機体開発を行うスタートアップも現れ、2014年には米国航空宇宙学会で正式にeVTOLの概念が紹介されました。

画像4_NASAが発表した個人用eVTOLコンセプト「Puffin」

さらに、2016年にライドシェアの大手UberがeVTOLを用いた都市部でのエアタクシー事業の構想「Uber elevate White Paper」を発表すると、〝空飛ぶクルマ〟の実用化が俄然現実味を帯びはじめ、世間で注目を浴びるきっかけとなりました。Uberは、eVTOLの最大のメリットに、車のための道路や橋、鉄道のための線路のように、乗り物を移動させるためのインフラが不要なことを挙げています。

画像5_Humphreys & Partners Architects, LP,Uber Elevate 2018

一方、日本国内では2018年に〝空飛ぶクルマ〟の実用化と世界を市場とした新たな産業育成を目的に経済産業省製造産業局及び国土交通省航空局が中心となって「空の移動革命に向けた官民協議会」が設置され、同年には社会実装に向けたロードマップが発表されています(2022年に改定)。